亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

生存者がいたのだろうか?
イブの周りに隊員達が集まってくる。

「……生存者がいたのか?」

ちょっと遠慮がちに隊員の一人が言うと、イブはこくこくと頷いた。

「うん………いる!………しかも…」

「―――しかも…?」
イブは瞳を輝かせて振り返った。

「―――美味しそうな匂いがする…!!」





………。








………美味しそう?







一瞬硬直する周りの面々。
自分の放った言葉が、どれ程周りに疑問符を生じさせたかなど露知らず、イブは瓦礫の山を掻き分けていった。
……まだ確か11歳だった筈の少女が、重い柱や壊れたドアを片手でぽいぽいと投げていく様は………異様、いや、異常だ。


そして………。



「―――いた…!」

イスと暖炉の隙間に、確かに動くものが。………よく見るとそれは、産着に包まれた赤ん坊だった。

イブはやや乱暴に両手で引きずり出した。

「……赤子か…唯一見つからずに助かったんだな…」

「…とにかく隊長に…報せよう。……えー…イブ……さん………うちの隊長呼んでくるからちょっとの間…」

「………美味しそう…」

じゅる、と涎を垂らす音が…間違いなく聞こえた。
………隊員は猛ダッシュでジスカを呼びに行った。