亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


「……念のため…生存者を探せ。もしかしたらってこともある……」

………ま、いたとしてもとっくの昔に逃げてるだろうけどな…。



「……なんだか…昔を思い出すわ………この景色…」

足下の木片を掻き分けながらマリアは呟いた。

「………アレスの使者に入る前…?」

ダリルは家畜の死骸を摘んで放り捨てる。

「……私の故郷も…影に襲われたから。………あの時の景色と一緒…ただ一つ違うのは………助けが来た…事ね」

忘れるはずもない、五年前の惨劇。

……死を覚悟したマリアの前に現れたのは………軍服を着た、11歳の少女だった。

「………トウェイン隊長が見つけてくれなかったら………今いないわ………イブもそうだし……ダリル君もだっけ?」

「………うん」

マリアは息を吐き、微笑を浮かべた。

「………第4部隊って……彼女無しではやっていけないわね?」



第3部隊の隊員に混じって、崩れた家屋の中をイブは覗いていた。隙間に顔を突っ込み、くんくんと鼻を利かせる。

……周りは、「この子…何してるんだろ」と言いたげな顔でイブをちらちら見ていた。

ぱっ、とイブは顔を出し…大真面目な表情をで一言。


「―――…この中…!」

びくっと隊員達は反応した。