亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

続いてジスカが口を開いた。

「よって……追撃は無いと判断した。総員、今から黒い塔へ戻る。………しかし武装は解くな。念には念をいれて直接森を突っ切らずに、農村部の谷側を移動する………以上~」

谷側を降りて行くのは初めてではない。過去に何度か通ったため、道は分かる。

………ただ、民と軍人が接触するということはあまり無い。

………基本的に、兵士は嫌われている。

そんなことを分かっているのかいないのか、マリアは嬉しそうに手を合わせて…

「平和的な場所なんて何年ぶりかしら~。……もし良かったら卵とか分けてもらお~」

と、パイ作りがマイブーム中らしいのか…ウキウキしていた。




沈黙の森は密林地帯だ。長い間人間が出入りしていなかったのか、木々の根や瘤が地面に浮き出ており、至る所に毒花や蛇の類いが敷き詰められていて、足の踏み場もない。

この未開の地を通っているのは………。

「僕らくらいだろうな…」

どこまでも続く大木をひょいひょいと避けて歩くダリル。

………本当に盲目?

と第3部隊の面々は不思議そうにみていた。