しかし、フェーラ本来の能力を出しきっているイブには、その動きは遅過ぎる。
パッと後退し、上下左右に突いて来る短剣をひょいひょいと避ける。
「………何パニクってんのよ。………あんた、半分人間で半分フェーラね?………フェーラ嫌い?」
眼前に繰り出された短剣の先を、イブは長い爪で跳ね返した。
「………差別でもされてたの?親から捨てられた?人間から石投げられた?殺されそうになったの?んん―?」
リストはもう片方の短剣を両手で握り締め、正面のイブに向かって突進した。
「―――お前に………何が分かる………!!」
「―――甘ちゃんね」
リストの真後ろに、イブはいた。
イブは背後からリストを蹴り倒し、短剣を奪って俯せになったリストの背中に突き付けた。
「甘ちゃんよ………あんたやっぱりガキ。………迫害されて………苛められて………自分が嫌い?…世間が嫌い?」
短剣を握り締める手に、力が入った。
「………苦しいなんて………当たり前なの………分かる?……あたしは……そんな意地悪な世間より………あんたみたいな根暗の方が………大っ嫌い!!」
―――短剣を、振りかざした。
大音響と共に、大地が揺れた。

