亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

目の前の非常識な現実が信じられないが…兵士らしくちゃんと腰のベルトには剣をさしている…。

………え?こんな奴に今倒されたの?

「―――何だぁ…隊長が本気モードで対峙してたから、どんだけ強いのかな~って期待してたけど………………ガキじゃん」

リストのこめかみに青筋がたった。
「ガキ」………嫌いな…本当に嫌いな単語。リストは短剣を握り直し、剣先をイブに向けた。

「………お前もガキじゃないか!!このっ…でしゃばりやがって…!」

「ガキだからガキって言っただけです―。でしゃばって悪い?可愛い女の子に会えてラッキーじゃ~ん。ほら、素直に嬉しがったら?」


………この小娘ぇぇ…!

リストはかっと目を見開いた。
……瞳は白く染まる。

ふっ、とイブの前から忽然と消えた。……リストはイブの後ろに回り込み、その細い首に短剣の鋭利な刃先を向けた。


―――死ね…!


血を求め、短剣は一直線に前へ………。







………イブの白い首が、すっと軽やかに刃を避けた。


かわされた?………馬鹿な!………このスピードに普通の人間がついてこられる筈が…。

「―――遅いよ」

笑顔のイブが、振り返り様に呟いた。
………同時に、片手で首を掴まれた。

そのまま押し倒され、ぐっと首を締め付けられる。