亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

「―――マリア…」

“解放”はこれで何度目だろう。もうあのパラサイトは十分成長している。
いつマリアを呑みこんで樹になるか…。

「……無茶な事を…!」

……自分のために、敵を足止めするためにしたのだろうが……愚か者め………!少しは残り少ない命を大事にしろ!

トウェインは階段に視線を移す。

………終わらせなければ…!

“闇溶け”で空間から武器を出し、そのまま階段を駈け登った。

「―――隊長!?」

イブは後を追った。








長い螺旋階段を上がっていくと、真上に晴れた星空が覗いていた。

………出口。

階段から抜け出そうと勢いをつけた。









隠す気など無い、はっきりとした鋭利な殺意。




すぐ脇からびりびりと伝わってきた。


トウェインは咄嗟に身を屈め、脇に転がり込んだ。

トウェインの頭がさっきまで覗いていた場所に、数本のナイフが突き刺さった。



………松明の明かりに背を向けた人影。
…それは自分より背が低い。

「―――この奥には行かせない…」

聞こえてきた低い声は、まだ少年の声。

(………幹部…リスト=サベス……)

背丈やぼんやりと見える顔立ちも、以前見た資料とほぼ一致している。