亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

頭皮が抉れ、頭蓋骨が露出している生首を蹴り上げながら、両手の指に付着した血を舐める。

―――やっぱり筋肉質の男って不味~い…。どこ囓っても固いし、苦いし…。



「―――イブ…私だ」

外から聞き慣れた声がし、イブは口の回りの血を拭った。

「隊~長~…遅いですよ―。暇だったからどんどん上っちゃって、もう後はこの上しか無いじゃないですか~」

「………本当に九階まで任せて良かった様だな…何処を見ても、食い散らかされた死体ばかりだ…」

トウェインはこの空間の生臭さに顔をしかめる。

「………皆殺しか?」

「いいえ―。半分以上は意識無いけど生きてるよ~。術をかけたから当分は起きませ~ん」

無駄に身体をくねらせてハートを散らすイブ。
………返り血まみれで可愛く振るっても逆に怖い。

「上には……少なくとも幹部の人間がいる筈だ。……逃げていなければな…」

「あ―…いるみたい~。気配がするよ?すぐ近くに一人………少し離れたところにもう一人………ありゃ?………マリアが“解放”してる…」

「………何だと…?」

トウェインは地上を見下ろそうと窓に歩み寄る。

………と、何本もの赤い枝が突然窓から侵入してきた。

………間違いない。

これはパラサイトだ。