亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

―――ズブリ。

勢いよく剣を抜くと、血が噴水の様に迸った。










「―――あ………あああああぁぁ!?」

恐怖。
全身を駆け巡る恐怖で、兵士達は我に返った。

女でも、兵士。人殺しの兵士。アレスの使者…!

一斉に、マリア目掛けて鋭い刃が振り下ろされる。
頭上で交じり合う剣を、マリアは剣一本で防いだ。

「……うーん…“闇溶け”使えないって、やっぱり不利ね」

マリアは剣を滑らせ、反動でのけ反った兵士達に、足払いを食らわせた。

一度に五、六人が地面に倒れ込んだ。

なんとか防いだ兵士には、みぞおちに蹴りを放った。
大の男が一人に、しかも華奢な女相手に、面白い様に崩れていく。―――屈辱だ。

「………糞女め…!生け捕りにして犯してやる…!」

中央に佇むマリアは、殺気が漂い始めた空気に、溜め息を吐いた。

「………物騒ね。犯すだなんて……思っても口に出したら駄目よ」

続々と、鞘から剣を抜く音があちこちから聞こえて来る。
ワイオーンまで周りを徘徊し始めた。


(………これは大変だわ……このままじゃ本当に生け捕りにされて…)

………辱めを受ける、か。



マリアの脳裏に、忌々しい過去の記憶が過ぎる。

いつの世だって…女は不便。

くすっと笑みを浮かべ、マリアはマントに手を掛けた。