数匹のワイオーンを塔の周りに放ち、厳重に固めた。
影まで出て来たのだ。この混乱に乗じて攻めて来られるとまずい。
「装甲兵は入口に並べ!持ち場を離れるな!侵入者を見つけたらすぐに報せ…」
言い終える前に、正面に整列していた兵士の一人が突然、崩れ落ちた。
俯せに倒れた兵士の背中には、深く刺さった一本の剣。
返り血で汚れたその剣を………灰色の軍服の人間が抜き取った。
「―――っ!?囲め!!奴を囲むんだ!!」
迅速に兵士達は動き、現れた不審な人物をあっという間に囲んだ。何本もの松明が、中央を照らした。
「―――今晩は。皆さん」
ふわりとした微笑を浮かべたマリアが、血刀をぶら下げて立っていた。
兵士達は一瞬呆然とした。
「―――おい…」
「――なんだこいつ」
「―――アレスの使者…だよな?」
「―――だが……女だぞ…?」
あの暗殺部隊の証である灰色の軍服を、女が纏っている。
剣を握っている。
………有り得ない事だった。
女が兵士だと?そんなの、見たことも聞いたことも無い…。
「……あら…免疫無いのかしら………ふふっ……それもそうよね―」
ちょっと新鮮な反応が滑稽に見え、マリアはくすくすと笑った。

