亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


数匹のワイオーンを塔の周りに放ち、厳重に固めた。

影まで出て来たのだ。この混乱に乗じて攻めて来られるとまずい。

「装甲兵は入口に並べ!持ち場を離れるな!侵入者を見つけたらすぐに報せ…」

言い終える前に、正面に整列していた兵士の一人が突然、崩れ落ちた。

俯せに倒れた兵士の背中には、深く刺さった一本の剣。

返り血で汚れたその剣を………灰色の軍服の人間が抜き取った。

「―――っ!?囲め!!奴を囲むんだ!!」

迅速に兵士達は動き、現れた不審な人物をあっという間に囲んだ。何本もの松明が、中央を照らした。












「―――今晩は。皆さん」

ふわりとした微笑を浮かべたマリアが、血刀をぶら下げて立っていた。

兵士達は一瞬呆然とした。

「―――おい…」

「――なんだこいつ」

「―――アレスの使者…だよな?」

「―――だが……女だぞ…?」

あの暗殺部隊の証である灰色の軍服を、女が纏っている。

剣を握っている。

………有り得ない事だった。
女が兵士だと?そんなの、見たことも聞いたことも無い…。

「……あら…免疫無いのかしら………ふふっ……それもそうよね―」

ちょっと新鮮な反応が滑稽に見え、マリアはくすくすと笑った。