亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



―――……腕が重たい…。







左腕に目をやると、そこだけ白い軍服が赤く滲んでいた。


……いつ斬られたっけ?
…ああ…もういい。んなもん知るか。


オーウェンは腕の痛みなど振り払い、再度両手で槍を握った。


オーウェンの足場は、今や、岩が露出した険しい崖の光景と変わらない。

地面は深く抉れ、亀裂が走り、漂う空気は赤土と同じ色で染まっている。






オーウェンが見据える正面には……嫌になるほど美男で、冷酷な男が無傷で立っていた。

服には破れも無ければ汚れ一つ無い。

(……けっ…この潔癖症野郎め………)

オーウェンは肩で息をする。
………足下には血が滴っていた。

………なんだぁ?………これは俺の血か?

………さすが俺…情熱的な綺麗な色してやがる…。

ハハッ…と笑みを浮かべるその額に、脂汗が滲む。










――奇妙な男だ。

………何故笑う?

……何故…笑えるのだ…。







………この男も……あの人も…。







―――何がおかしい。







ベルトークは剣の柄を握る手に力を込めた。







―――…哀れな男よ。