―――……腕が重たい…。
左腕に目をやると、そこだけ白い軍服が赤く滲んでいた。
……いつ斬られたっけ?
…ああ…もういい。んなもん知るか。
オーウェンは腕の痛みなど振り払い、再度両手で槍を握った。
オーウェンの足場は、今や、岩が露出した険しい崖の光景と変わらない。
地面は深く抉れ、亀裂が走り、漂う空気は赤土と同じ色で染まっている。
オーウェンが見据える正面には……嫌になるほど美男で、冷酷な男が無傷で立っていた。
服には破れも無ければ汚れ一つ無い。
(……けっ…この潔癖症野郎め………)
オーウェンは肩で息をする。
………足下には血が滴っていた。
………なんだぁ?………これは俺の血か?
………さすが俺…情熱的な綺麗な色してやがる…。
ハハッ…と笑みを浮かべるその額に、脂汗が滲む。
――奇妙な男だ。
………何故笑う?
……何故…笑えるのだ…。
………この男も……あの人も…。
―――何がおかしい。
ベルトークは剣の柄を握る手に力を込めた。
―――…哀れな男よ。

