亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

「追え!!逃がすな!!松明を持て!!」

塔の周りは、兵士達の声と足音で塗れた。

―――敵兵発見。
その情報は一気に城内に広まった。





マリアは塔の裏手に回り、更に奥へ走った。前方には、いつの間にか装甲兵と弓兵が数十人待ち構えていた。よく教育された兵士達だ。

「敵を射抜け!……放て!!」

一人が腕を振り上げた途端、前方から矢の嵐が飛んで来た。

マリアは一瞬ぐっと身をかがめ……上空に跳んだ。


―――跳んだと言うより…飛んだと言った方が適格かもしれない。
マリアの姿はあっという間に高く、十メートル以上は軽く越す高さにあった。

………あれは人間か?

敵兵士達は思わず唖然とし、遥か後方に降り立ったマリアを追いかけるのも忘れていた。


マリアはなんとか敵兵を振り切り、素早く茂みの中に身を隠した。

……久しぶりにこんな全速力で走った。しかも人一人抱えて。

マリアはダリルを横に寝かせ、パチパチと額を叩いた。

「―――…ダリル…ダリル君…?……死んじゃった?……どうしようかしら………影になる前に燃やさないと…」

「―――…ちゃんと生存確認してよ…」

意識が戻ったかと思えば、むくっと突然起き上がるダリル。