―――頭が…………………割れる。
―――………引き裂かれる。
「―――――っああぁぁぁ…!!」
耳を塞いでも、蹲っても、激しい痛みは止まない。
両耳を押さえていた指の隙間から、真っ赤な血が滴る。
激しい吐き気…目眩…。
………ダリルの意識が遠のいた。
完全に“闇溶け”は解けてしまい、脱力したダリルの身体が重力に従ってぐらりと傾いた。
―――ずるっ、と木の幹から離れる。
「―――ダリル!!」
地面に墜落しそうになったダリルを、間一髪の所でマリアが受け止めた。
まだ小さな少年は腕の中で力無くうなだれ、意識は無い。
両耳から血が流れていた。
マリアとダリルの姿が、敵前で露になった。
アレスの使者の者であることを表す、灰色の軍服。
ルアは牙を剥き出しにして低く呻いた。
周りの兵士達もすぐに気付く。
「―――て、敵兵発見!塔の西側に二名!」
「―――…一人は負傷している!囲め!!逃がすな!」
マリアは向かって来る敵兵を窺いながら、ダリルをしっかりと抱えた。
―――…作戦失敗…。後は野となれ山となれ…。
マリアは踵を返して走った。

