亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


―――頭が…………………割れる。
―――………引き裂かれる。












「―――――っああぁぁぁ…!!」

耳を塞いでも、蹲っても、激しい痛みは止まない。


両耳を押さえていた指の隙間から、真っ赤な血が滴る。


激しい吐き気…目眩…。
………ダリルの意識が遠のいた。
完全に“闇溶け”は解けてしまい、脱力したダリルの身体が重力に従ってぐらりと傾いた。

―――ずるっ、と木の幹から離れる。










「―――ダリル!!」










地面に墜落しそうになったダリルを、間一髪の所でマリアが受け止めた。


まだ小さな少年は腕の中で力無くうなだれ、意識は無い。
両耳から血が流れていた。






マリアとダリルの姿が、敵前で露になった。
アレスの使者の者であることを表す、灰色の軍服。

ルアは牙を剥き出しにして低く呻いた。

周りの兵士達もすぐに気付く。


「―――て、敵兵発見!塔の西側に二名!」

「―――…一人は負傷している!囲め!!逃がすな!」


マリアは向かって来る敵兵を窺いながら、ダリルをしっかりと抱えた。


―――…作戦失敗…。後は野となれ山となれ…。

マリアは踵を返して走った。