亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



リストは側の明るいランプを手に取り、城壁の上から戦場となっている荒野を見下ろした。

今舞台に立っているのは、敵のみ。

ふん、と鼻で笑い、リストはそのまま荒野に向かって……ランプを手放した。








くるくると回り、光りの輪を作りながら落ちていく。

地面へ。






この闇夜を照らすため。

















荒野の真ん中を走っていたトゥラは、突如足を止めた。

他のライマン達は疾走を続けていたが、トゥラだけがその場に孤立した。



トゥラの鋭い瞳は、城壁から落ちる小さな明かりをはっきりと映し、そして…………。












踵を返して戻り出した。








前へ走る第1、第2部隊の兵士達と擦れ違い、後方の第3部隊をも通り越す。






すぐ脇を、見慣れたライマンが逆方向に疾走していった。
足を止めぬまま、ジスカは振り返る。




間違いない。あれはトウェインのライマンだ。


………何故戻る?














ハッ…ハッ…ハッ…と荒い息を連呼し、トゥラは走った。

第3部隊を通り越すと、そのすぐ後にトウェインがいた。


“闇溶け”で姿を隠していても、トゥラには分かる。

我が主人に向かって、トゥラは吠えた。