リストは側の明るいランプを手に取り、城壁の上から戦場となっている荒野を見下ろした。
今舞台に立っているのは、敵のみ。
ふん、と鼻で笑い、リストはそのまま荒野に向かって……ランプを手放した。
くるくると回り、光りの輪を作りながら落ちていく。
地面へ。
この闇夜を照らすため。
荒野の真ん中を走っていたトゥラは、突如足を止めた。
他のライマン達は疾走を続けていたが、トゥラだけがその場に孤立した。
トゥラの鋭い瞳は、城壁から落ちる小さな明かりをはっきりと映し、そして…………。
踵を返して戻り出した。
前へ走る第1、第2部隊の兵士達と擦れ違い、後方の第3部隊をも通り越す。
すぐ脇を、見慣れたライマンが逆方向に疾走していった。
足を止めぬまま、ジスカは振り返る。
間違いない。あれはトウェインのライマンだ。
………何故戻る?
ハッ…ハッ…ハッ…と荒い息を連呼し、トゥラは走った。
第3部隊を通り越すと、そのすぐ後にトウェインがいた。
“闇溶け”で姿を隠していても、トゥラには分かる。
我が主人に向かって、トゥラは吠えた。

