亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



竜巻の強風を成す、目茶苦茶に乱れた黒の魔力の微粒子が、ダリルの『理』の目ではスローモーションの様に、ゆっくりと流れていくのが見えていた。

空気中に舞う塵や埃の一つ一つ、煌めく金色の花粉、黒い風の向き………。


全てがはっきりと、鮮明に、正確に、映った。

……意識はそのまま厚い竜巻をゆっくりと擦り抜け、そのまま内側へ進行し………。





………音の無い形だけの世界で、巨大な手に束縛されて動けないでいるキーツを、見つけた。


―――左……11時の方向。高さは二メートル弱。






位置を、とらえた。



























「―――はぁっ…………はぁっ…………………っ………!」


目に焼き付く程、何十回も、何百回も映した菱形の真っ赤な目玉を、呼吸を整える暇も無く、一瞬で、裂いた。


小高い丘の様な影の塊を飛び越え、砂風と花びらが舞い散る中を、高く飛翔した。

………地上が遠い。

とうとう目指した地点の目の前にまで来た。目下で、久し振りに屍以外の生きている人間を見つけた。



………そのまま、重力に従って下降した。






その存在にいち早く気がついたのは、パッと頭上を見上げたイブだった。

そこから少し離れた所に、ローアンを乗せたトゥラは勢いよく着地した。

その反動と体力の消耗から、ローアンは剣を握ったままトゥラから転がり落ちる様に脇に倒れた。



「―――隊長…!?」

「―――…ローアン様!!」

駆けてくる足音を聞きながら、剣を地面に突き刺し、疲労しきった身体をゆっくりと起こした。


「…隊長……大丈夫?………ボロボロだよぉ…」