亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



潰される様な圧迫感が、全身を襲った。

……息が詰まった。


「―――!?………っ………!」













………ゴツゴツとした、木の枝の様な物体が………背後からキーツを束縛していた。


パラサイト?いや、違う。これは…………………………巨大な、手だ。






切り離されて動かなくなった筈の、イヨルゴスの右腕。

黒ずんでいたそれが、突然、動き出したのだ。



………油断した…!

怪物の右腕はしっかりとキーツの身体を掴んでおり、びくともしない。

幸い、胸部から下を掴まれていたため両手は自由に動かせたが…だからといってどうにかなることではなかった。

持っていた剣代わりの武器の切っ先で、太い指を何度も刺すが、本体と切り離されたこの腕にはもはや痛みなど感じないらしく…更に握力を強めてきた。





「……………うっ………っああ………!!」

………握りつぶされる。

ミシミシと、奇妙な音が全身に響き渡る。


……力が抜けていく手から、武器が離れた。

足元から、カランカラン…と虚しい音が聞こえてきた。





呼吸難になる寸前で、束縛する手の力が本の少し弱まった。
………しかし、全身の痛みは相変わらずだ。…直ぐに、両手足が痺れてきた。



「……………っ…………………この……………野郎…………!!」

苦痛に満ちた顔を上げると、こちらに突っ込んでくる体勢に入るイヨルゴスと再度目が合った。


………その目は、笑っている様に見えた。


荒々しい呼吸は、笑い声が混じっているのかもしれない。



………イヨルゴスは裂けた口を大きく開いた。












………来る。