亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

「………悪足掻きを………。………………………そんなになってでも…………俺を殺したいのか…?」

…この…異常な程の執念。
己の身など、どうなろうと関係無いのか…?
獲物を殺すまで、こいつは…死ぬ気は無いらしい。


「………お前には本当に……呆れてしまうな……!」

イヨルゴスはブルッと一度痙攣し、裂けた口を最大まで開いて……倒れ込む様に、キーツに向かって真直ぐ突っ込んで来た。

パラサイトが這う地面を削っていく。刺さっていた枝が、そのまま絡み、もしくはズブッと抜けていく。

黒い花びらが散った。


「………くっ…!」

この動きには慣れた。その速さも、勢いも、全て掴んだ。

最小限の動きで、キーツはヒラリと怪物を避けた。

脇を通り過ぎていく怪物を見送り、直ぐに距離をとるため大きく後退した。



………蔓や枝が群がる、生気の無い怪物の右腕の側まで下がり、再び奴の出方を伺った。

(………いけるかもしれない………こうやって時間を稼げば…剣も………)


額の汗を拭い、乱れた息を整える。

………吐く息は真っ白だ。始終、動き続けているためか……寒さを全く感じない。むしろ暑いくらいだ。


……極度の緊張故、でもあるのかもしれない。





正面で、むくりとイヨルゴスが片腕を支えにして起き上がった。

………そして相変わらず……奴の目はこちらを捉える。



………いい加減嫌気がさしてきた。








イヨルゴスはこちらにゆっくりと向き直った。

また真直ぐに突っ込んでくるのだろうか。

キーツは身構えながら、じっと怪物を睨み付けていた。











………その途端、だった。