亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


トウェインは走った。




身をかがめ、風の様に速く。
隊内でも、総隊長、ベルトークに次ぐ駿足だ。


音も無く移動する小さな身体は、一瞬で闇に溶けた。



“闇溶け”で姿を隠したまま、トウェインは城へと向かった。

黒ずんだ曇りガラスの様な視界で、この荒野の状況を見回した。

敵は先発隊を前進させた後、次の兵を放とうとしない。


………指示が遅れているのだろうか?


前を見ると、武器を掲げた第3部隊が前方を走っていた。


………何だ、この違和感は…?



この調子だと……いとも容易く、前衛の第1部隊と第2部隊は城まで行けそうだ。










それにしても……。











………敵が、静か過ぎる。

























「―――リスト…」







ルアの背を撫でながら、キーツは呟いた。

リストは素早くこちらに顔を向ける。

キーツは、こちらに向かって来る敵の集団を眺めながら………………笑って言った。













「―――今だ。……………明かりをつけろ」