―――ブンッ…
一瞬、何も聞こえなくなっかと思えば………耳鳴りがした。
ああ、耳までいかれてきたのか…と思いながら顔をしかめ、瞬きをした………直後。
…………音の無い、無の世界が……眼前に広がっていた。
………?
目の前に、今にも突っ込んできそうなイヨルゴスは、いる。
しかし………完全に静止していた。
自分とイヨルゴス以外、何も無い。三百六十度見渡しても、背景には竜巻は無く、斑の無い黒一色で………心なしか、寒い、
冬だから当たり前なのだが………そういう、肌に感じる様な寒さではない。
「………」
何が起こったのだろう?
…イヨルゴスが魔術でも発動しているのか。
………しかし…術者までが静止する筈がない。
呆然と辺りを眺め、キーツは剣を下ろした。
まるでここは………深い穴の中。
闇の中。
『……当たり。闇の中だよ』
―――突如、キーツの頭の中に、少年の声が響いてきた。
驚いて再度見渡すが………誰もいない。
………しかしこの声は…。
『………心配しないでよお兄さん。………今、僕があんたらの意思にちょっと入り込んでるだけだから……。…………ああ、剣は無いけど…なんとか頑張っているみたいだね。………でも、あんたが倒れるのも、時間の問題だよ』

