亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

「―――…キーツ様!…キーツ様!………キーツ様!!」

主が怪物相手に成す術も無い状態であると分かると、顔面蒼白で狂った様に叫びながら、アレクセイは激しい竜巻に近寄ろうとする。
………そんなアレクセイを、リストは行かせまいと背後から取り押さえていた。

「……アレクセイ!気でも狂ったのか!!…………このまま身一つで突っ込んでも…巻き上げられるだけだぞ!!」

「………しかし…!…………しかし………キーツ様が……!?」


いてもたってもいられないアレクセイ。

彼はゲイン家に仕え、嫡子であるキーツを赤ん坊の頃から面倒をみてきた。
勉学や道徳、武術においても、手塩をかけて育て上げたのだ。


貴族に仕える身のアレクセイは、遠くの地にいる家族とはもう長い間会ってもいないし、手紙のやり取りもしていない。
そんな彼にとって、18年も付きっきりだったキーツはある意味、我が子の様な存在なのだ…。



そんな彼等の側に、何処に行っていたのか、イブが何やら手にして戻ってきた。

掴んだそれを、必死な形相のアレクセイに突き付けた。

「だいぶ離れた所……影がうじゃうじゃいる辺りで、花びらに埋まってた。………お兄さんのじゃないの?」

イブが持っているそれは、青白い刃以外真っ黒な長剣。



………それはまさしく、キーツの剣。
見間違える筈が無い。


「…………や……やはり………キーツ様は…」

武器の無い状態。







せめてこの剣だけでも渡せないものか…。






「………………それ、出来るかもしれないよ」

何も言っていないのに、ダリルはそう呟いた。
アレクセイはギョッとしてこの少年に顔を向ける。