亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


……目の前に落下してきた巨大な兜。

あしらわれた宝石と長い鎖が辺りに飛び散る。



その兜に隠されていた頭は、薄暗い中でもはっきりと見えた。







(……………なんて…)















ギョロギョロと忙しなく動く両眼は瞼など無く、頭の天辺から後頭部全体にかけて、焼け爛れた薄い皮膚が覆っており、細かく青黒い血管と頭蓋骨が透けて見えた。
常時小さく波打つ皮膚は、まるで心臓の様だ。


………額の中央には、うっすらと黒光りする………魔方陣。



















………なんて………


















「…………醜いんだ…」


悲しげな表情を浮かべてキーツは呟いた。


……聞こえてしまったのだろうか。

その直後、イヨルゴスは低く呻きながら、頭を隠す様に片手で顔を覆った。
既に縫糸も緩んで解けてしまい、開閉が自由になった、耳まで裂けた口がわななく。
皮の剥れた切り傷だらけの薄い唇に、青黒い血が滲んだ。




『――……ガアアアアアアアアアアアア!!』
















殺気を更に膨らませ、イヨルゴスは凄まじい咆哮をあげた。

空気はピリピリと波打ち、圧迫される。

目の前にいたキーツはその覇気に押されて後退した。




大きく裂けた口が開かれる度に、僅かな皮と筋肉で繋がった下顎が落ちそうだった。

唾液塗れの尖った黒い歯が、ギリギリと歯ぎしりで耳障りな不協和音をたてる。

隙間から覗く赤黒い下は、先が蛇の様に二股になっていて……驚く程長い。





その舌が、鞭の様に………頭上から空気を切って、襲いかかってきた。