亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

キーツは怪物の背に回り、首に巻き付いた巨大な鎖を掴み、それを伸びてきた手に向かって投げ付けた。

長い鎖は半円を描いて怪物の指や手首に巻き付いた。

『………ガアアアア…!』

己の首にかけていた鎖に腕をとられ、上半身のみの今や両腕で身体を起こしていたイヨルゴスは、バランスを崩して斜め前に頭を地に打ち付けた。

キーツは怪物の肩から振り落とされない様にしながら、すぐに垂れ下がった長い耳に近寄り…。

「………貰うぞ…!」

鉱物か何かで出来た、怪物の巨大なピアス。二メートル程の古代文字が彫り込まれた棒の様なピアスで、先が尖っている。

………それを掴み、力任せに怪物の耳からもぎ取った。


接合部から、ブチリと生々しい音が聞こえた。
イヨルゴスは一瞬呻いた。



長いピアスは、まるで槍の様。
キーツは両手で掴んでクルクルと頭上で回し、兜から覗く隙だらけの怪物の後頭部に向かって………思い切り突き刺した。



『――グアアアアアアアア………!?』


これはかなり効いた様だ。
後頭部や首の後は、たいていの生き物の弱点である箇所だ。
古代の魔獣も例外ではない。


キーツは同じ箇所を何度も何度も突き刺した。
苦しそうに呻き声を上げて頭を激しく振るイヨルゴス。
前後左右に振り続けているせいで、頭の古い兜がだんだんとずり落ちてきた。



………絡まっていた鎖が、ブチッと切れる音がした。

「―――!?」

…途端、いつの間にか自由になった手で、キーツは払い落とされた。


「…………っ…!」

なんとか受け身をとり、体勢を整えたキーツの頭上に、グラリと巨大な兜が落下してきた。