亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

激痛から痺れへと変化した折れた足を引き摺り、何とか怪物の手を避けた。

目の前で粉塵をあげ、地面にめり込んだ手は、爪は全部剥がれ、厚い皮は爛れ、砂利がへばり付いた指の生々しい切断面を見せていた。


残った指がズブリと地面に食い込み、そのまま捲った。
距離をとったキーツに向かって、剥がした厚い土の塊を投げ付けてきた。

イヨルゴスからすれば、それは手の平にも満たない塊かもしれないが、人間にとっては巨大な剥がれた岸壁同然。

そんなものが回転しながら、砂埃を掻き分けて飛来してきた。



「…ちぃっ……!」

…後ろは竜巻。
武器も何も無い今、避ける他無いが…。


(………随分と舐められたものだ!)


キーツは動く方の足で軽く跳躍し、目の前にまで迫った土の塊を、そのまま勢いを付けて回し蹴りを放った。

鋭い蹴りは、一瞬でそれを粉砕した。

粉塵が舞い、キーツとイヨルゴスの間の視界が悪くなる。


キーツは動く方の足になるべく重心をかけ、その砂煙に飛び込んだ。

片足が折れているとはとても思えない様な自然な走りで、キーツはイヨルゴスに突っ込んだ。

濁った砂色の空気を切り、怪物の正面に躍り出た。

先程までとは打って変わって何故か向かってきたキーツに、怪物は一瞬怯んで腕を上げようとしたが、それよりも早く、キーツはヒラリとその青白い巨大な腕に飛び乗った。

ゴツゴツとした堅い腕を伝って走り、キーツはあっという間にイヨルゴスの肩の辺りまで登り詰めた。


憤慨し、苛立つイヨルゴスは、身体に乗っているキーツを振り払おうと、頭を振ったり、手を伸ばしてきた。