亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


クリクリしたつぶらな瞳と視線が重なる。





……この犬は中々高い白の魔力を持っている。多種多様な術も熟知している様だ。
力の調節も出来るのだろう。


(………………やれる、かな…?)







……その途端、目の前の竜巻から、岩を砕いた様な荒々しい音が鳴り響いた。

アレクセイの顔が、サッと青ざめた。

「……キーツ様……!?」

内側が騒々しい。吹き荒れる風とは違う轟音が聞こえてくる。

イヨルゴスらしき低い呻き声。



鼓膜を揺らすその声は、間近で聞くと頭がクラクラした。
中はどうなっているのだろう。キーツが独りで化け物に向き合い、耐えている姿が脳裏に浮かんだ。











「…………お兄さんって今……剣を何本持ってんの?」






…こんな時に、イブは何気無く訊いた。

相手にする気のないリストの代わりに、アレクセイが振り返る。


「………何故、その様なことを……」

「……………なんかね…あの怪物の斧の他に…………金属の臭いが、無いんだ…」

「……何だって!?」

聞き捨てならない、とリストが割り込んできた。

「……全然違う所からお兄さんの剣の臭いがするよ…?……………あの人……今丸腰なんじゃないの……?………」



























「―――っあ゛…!」

風の壁スレスレの所に落下し、受け身もとれないまま背中を打ち付けた。



区別などつけずに全てをのみこんでいく竜巻の風に、身体を引き摺り込まれる感覚を覚え、慌てて壁から離れた。



……頭上から、もう見慣れた怪物の手が勢いよく降りてきた。