クリクリしたつぶらな瞳と視線が重なる。
……この犬は中々高い白の魔力を持っている。多種多様な術も熟知している様だ。
力の調節も出来るのだろう。
(………………やれる、かな…?)
……その途端、目の前の竜巻から、岩を砕いた様な荒々しい音が鳴り響いた。
アレクセイの顔が、サッと青ざめた。
「……キーツ様……!?」
内側が騒々しい。吹き荒れる風とは違う轟音が聞こえてくる。
イヨルゴスらしき低い呻き声。
鼓膜を揺らすその声は、間近で聞くと頭がクラクラした。
中はどうなっているのだろう。キーツが独りで化け物に向き合い、耐えている姿が脳裏に浮かんだ。
「…………お兄さんって今……剣を何本持ってんの?」
…こんな時に、イブは何気無く訊いた。
相手にする気のないリストの代わりに、アレクセイが振り返る。
「………何故、その様なことを……」
「……………なんかね…あの怪物の斧の他に…………金属の臭いが、無いんだ…」
「……何だって!?」
聞き捨てならない、とリストが割り込んできた。
「……全然違う所からお兄さんの剣の臭いがするよ…?……………あの人……今丸腰なんじゃないの……?………」
「―――っあ゛…!」
風の壁スレスレの所に落下し、受け身もとれないまま背中を打ち付けた。
区別などつけずに全てをのみこんでいく竜巻の風に、身体を引き摺り込まれる感覚を覚え、慌てて壁から離れた。
……頭上から、もう見慣れた怪物の手が勢いよく降りてきた。

