頭上から声が聞こえたかと思うと、目の前にリストが舞い降りた。
肩で息をするリストは、全身が砂埃と切り傷だらけで、白い軍服は幾つもの血で滲んでいる。
切れた唇の血を拭い、キョロキョロと辺りを見渡した。
「………無事みたいだな。……今の……よく避けられたな………気がついたらあの竜巻にのまれていて……空に放り出されてたよ……」
「………キーツ様が助けて下さいましたので、なんとか…。………それよりキーツ様が……!…吹き飛ばされたのかもしれません。あのお身体では充分に動けますまい………何処に………」
手元に残された軍服の上着を見下ろして、アレクセイは不安げな表情で言った。
「………あの化け物もいないぞ………一体何処に…。………………………?……………」
………ふと漂ってきた異臭に、リストは眉をひそめた。
瞬時に白く濁った彼の瞳は………。
………………依然として存在する、巨大な不動の竜巻を、映した。
アレクセイは、ただじっと黒い竜巻を見詰めるリストの視線を追った。
「………怪物はもしや………………あの中に……?」
「………の、様だな…………………風の層が厚過ぎてよく見えないが………この臭い………間違いなく……」
「だけなら良いけど、それじゃ終わらないみたいだよ」
…第三者の声が割り込んだ。
アレクセイとリストの背後に突如黒い闇が浮かび上がり、そこから“闇溶け”でダリルが現れた。その後ろにイブも続く。
「………どういうことですか……?」
切り傷だらけだが大して怪我をしていないダリルとイブに顔を向けた。
ダリルの前に出てきたイブが、顔を上げてクンクンと辺りの空気を嗅いだ。
「……多分、ね…」

