突き放す様な台詞を吐くジスカは、自嘲的な笑みを浮かべてローアンを軽く押した。
………行け、とだけ。
「………」
ローアンは無言で立ち上がった。
数秒の間ジスカを見下ろしてから……踵を返した。
「……………おーっと、忘れ物だぜ…」
突然ジスカは呼び戻し、重たい腕を振った。
…その直後、振り返ったローアンの目の前に、真っ黒な闇が立ち上ぼった。
サァ―っと霧状の闇が晴れていく。
………そこから現れたのは………長く、巨大な………緩い曲線を描いた剣。自分の身長を軽く越す…剣。
………ローアンの……トウェインの剣だった。
アレスの使者から抜け出した日に、置いてきた………あの剣。
あの日最後に見た姿同様、目の前で地面に深く突き刺さっている。
「………」
「……………戦士が……自分の剣を捨てるんじゃねぇよ………ずっと預かってた。…………………それ持って、早く行け……」
……ローアンはそっとその巨大な刀身に指を這わせ………重々しい、しかし手にしっくりとくるその柄を握り、引き抜いた。
………この重みも、輝きも…全て懐かしく感じる。
「………ありがとう、ジスカ………」
「………」
「………死んだりするなよ」
それだけ言って、ローアンは騒々しい戦場へ、再び向かって行った。
赤いドレスが、薄暗い砂煙の向こうへと消えて行くのを眺めながら……ジスカは深い溜め息を吐いた。
(………………ダチの役目はここまで…っと……)
血が止まらない脇腹から手を離し………槍を支えにしてその場でゆっくりと立ち上がった。
荒廃した景色が広がる。

