首輪を外された飼い慣らされていない獣は、やりたい放題で暴れ回っている。
隣りを歩くトゥラが、突然吠えた。
反射的に剣を構え、何事かと見やると、トゥラはある方向に視線を注いでいた。
「…どうした、トゥラ。………………………………!?」
どこもかしこも、むき出しになった岩肌と砂埃と、屍と影に満ちている。
そんな殺風景の中に、ローアンは………見つけた。
ズルリと地面から出てきた影に剣を振るい、開いた口から覗く牙を砕いてやってから、ローアンは走った。
………血腥い死体と、異臭を放つ影の体液が散らばる中で、無気力と言わんばかりに仰向けで横たわっていた彼の元に駆け寄った。
「―――ジスカ!」
夢心地の様なぼんやりとした両目で天を見据え、ゆっくりと呼吸を繰り返していたジスカ。その手に槍は無い。
真っ暗な曇り空しか無かったの視界に、突然真っ赤なドレスで着飾った見慣れた女が現れ、少し朦朧としていたジスカの頭は一瞬で覚醒した。
「…………………………………………………………お前………………何だその格好……」
…とんでもない事をしでかして別れてから、内心恐れながらもとうとう来てしまった再会の第一声が………それだった。
ジスカは何度も瞬きをしながら、心配そうに覗き込んでくるローアンをまじまじと眺める。
「…………………馬子にも衣装……ってやつか……………」
「………どうしたんだ…?…………止血をしないと……………脇腹の傷が深いぞ……」
横たわる彼の腹部辺りから、ジワリと血が滲んでいた。
火傷の様な斬り傷だ。ジスカ程の男が、こんな傷を負うとは…。

