亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



一気に影の群を一つ殲滅したローアンは、歩調はそのままで、荒野に足を踏み出した。




広がる赤土の上には、おびただしい量の無残な死体と、それを覆い尽くす、匂い立つ漆黒の花びら。


そこら中に、赤い枝や蔓が蠢き回っていた。




…ローアンは、荒野の中央にそびえ立つ、立派な大樹を見やった。
真っ赤な太い幹に、空を覆う真っ黒な花。
花吹雪。





「……マリア………………………………馬鹿者め………!」

唇を噛み締め、パラサイトから視線を外し、近寄ってくる影に一太刀浴びせた。



地面を削りながら、赤い枝が物凄い速さで這い、屍を持ち去っていく。
枝はローアンの方にも一直線に伸びてきた。
枝の先が五、六本に分かれ、ローアンに絡み付こうとした。


「―――止めよ、パラサイト」

枝を一瞥するなり、ローアンは呟いた。






………途端、枝はローアンを避け、反対の方向へと這っていった。そして何故か、ローアンを追う影に次々と絡み付き、食らっていく。




………彼女の意思が残っているのか、それとも王族への忠誠心故か、どちらにしろ、パラサイトはローアンに襲いかかろうとはせず、むしろ守ろうとしている様だった。


ローアンは無言で剣を振るう。

時折“闇溶け”をして姿を眩まし、群を避けながら突進む。


影と花びらの暗い漆黒の世界の中で、異彩を放つ鋭い高貴な赤は、道を切り開いていった。





粉塵を巻き上げるイヨルゴスの姿が、少しずつ近くなってきた。



…召喚獣は本来、術者が死ねば消えてしまう。オルカも後を追う様に消えてしまったのだが……このイヨルゴスはまた別なのだろう。
術者との契約は破棄されている。