亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


………黒い塊を散らしながら、どんどん遠ざかっていく高貴な赤。

師団長及び手傷を負った部下達は、その背中を呆然と…しかし敬意を表しながら、ただただ見詰めていた。











飛んできた鳥型の影を一瞬で両断し、そのままクルリと身体を捻って背後の影を切り刻んだ。

ローアンはひたすら進む。荒野を目指して、丘からゆっくりと降りていく。

覆い被さろうとしてきた巨大な影に向かって、ローアンは見もせずに剣を投げ付けた。
剣は回転しながら飛翔し、ズブリと生々しい音と共に目玉に食い込んだ。
悲鳴を上げてのけ反った所に、高く跳躍したローアンが両手で剣を握って………上から垂直に両断した。

目玉から剣を抜く事も忘れない。


赤い花びらの様なドレスを揺らめかせ、クルクルと回転して着地した。


「…トゥラ、分身。ルア、光弾を放て」

素早い指示を送った途端、地面から口を開けた影が現れた。

しかし、両足に齧り付こうと口を閉じた影の牙は、空を裂いただけ。
立っていた筈のローアンの姿は忽然と消えていた。





途端、青白い光の玉が、影の群の頭上に音も無く現れたかと思うと、一瞬で膨張し……………破裂した。


波紋の様に、衝撃派は広範囲に渡っていく。
丘から荒野へと続く、良く整備された長い坂道全体に、太陽の如き眩しい光と凄まじい高温の熱が降り注いだ。


影の群は成す術も無く、聖なる光と熱に撫でられ、蒸発していった。







………荒野の手前辺りで、グラリと空間が歪み、そこから昇り立つ冷たい黒煙から、闇を纏ったローアンとトゥラが現れた。


すぐ後ろから、影の屍を乗り越えてルアが追いついてきた。