亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



(…………重…傷……)

………不安だ。




………会いたい。

…彼に会いたい。





………何処にいるの…?



(………あの召喚獣のいる辺りに………彼は………)

………そんな気がする。









「―――……師団長、ここの守りは任せた」

そう言うなり、ローアンは師団長の横を通り過ぎて、何の躊躇いも無く影の群に歩んで行った。

「…なっ…!………ローアン様!?」

影達は自分を狙っていると知っていながら、あえて標的になろうと大胆不敵な行動を始めるローアンに、師団長は驚愕の声を上げた。

「……お、お止め下さい!!…戦場に行かれるなどと、この敵の中を如何して……!………っ…!」

止めようと伸ばした腕を、脇から飛び出した影が食らおうとし、咄嗟に引っ込めた。



ローアンは前を見据えてゆっくりと歩みながら、辺りに突き刺さっている敵味方の剣を両手に適当に掴んだ。


左右に、ルアとトゥラが並ぶ。





歩みを止めぬまま、ローアンは二本の異なる剣を、構えた。










「―――斬り進む!」












道という道が影で覆い尽くされ、階段の段差も見えない中、ローアンは前を遮る影の群を、問答無用で斬り飛ばしていった。


その動作に、無駄な点は一切無い。


一振りで確実に急所の目玉を貫き、両断し、柄で潰し………道を作っていく。

両脇はルアとトゥラが応戦し、真ん中の我が主に近付けさせまいと唸り、牙をむく。



影達は確かにローアンただ一人を狙っているらしく、城内に侵入しようとしていた影の群は忽然と姿を消し、ローアンに吸い寄せられる様に踵を返していた。