亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


虫の息。
だが、生きている。

痛みの中で、生きている。

………なんて、残酷なのだろう。





串刺しで動けない兵士達の両足に、真っ黒な影がにゅるりと絡んだ。

………手だ。






「―――ご覧よ…ルア……」

手元で剣をくるくると回しながら、残虐且つ不気味な光景を眺めるキーツ。

………何故だか、笑みが零れた。


嘲笑に似た笑みが。


「………あの人間から離れた姿が…俺達の敵だ。………影と変わらないじゃないか…」






上へ上へと伸びる手から、肘、肩が徐々に現れていく。

立ち込める黒煙から、人の姿が露になった。



足首掴み、腕を掴み………全身が完全に、表に出た。