「―――先発隊………前へ」 闇の淵を見据え、キーツは手を挙げた。 顔半分を覆う兜が、一斉に兵士達の殺気だった眼光を収める。 前へ。 前へ。 臆するな。 横一列の陣を組んだまま、兵士達は夕闇の中を前進した。 ―――森の手前に並ぶシルエットは………誰一人動かない。 迫り来る敵をただ、傍観してくるのみ。 高い城壁の上に佇み、敵の様子を伺うリストは、顔をしかめる。 「………敵兵………微動だにしません」