自分の足音とゆっくりとした呼吸音以外で謁見の間に響き渡ったのは、自分の名。


聞き慣れた女の声。


悲痛な叫び。











クライブは入口の方に振り返った。




ああ、笑みが止まらない。

















肩が震える。














剣を握り直して、クライブは彼女を瞳に映した。
















………小柄な女は肩で息をし、真っ赤なドレスを大事に抱えて、うまく動かない身体を酷使して…………凛としたスカイブルーの瞳で、こちらを睨んでいた。







クライブは口元を歪めた。








ろくに体力も無いのに……ここまで追いかけて来たのか。



彼女はいつも………振り返れば………必ず後にいるのだ。
……ついて来る。

……不安で溜まらない子供の様に……私の元へ駆けて来る。








「…………………お前は………昔から………………変わらないな」












「―――………はい………………総隊長。…………いえ………………………………………………ユリアクロウ………」














刃こぼれしている短剣が、こちらに向けられた。








注がれる視線からは、戸惑いと緊張感、そして僅かながらの敵意が感じられる。

















「―――……………………フフッ………………………ハハハハハハ………」









持っていた剣を納め、スラリ、とクライブは、もう一本の剣を抜いた。

ユリアの名が刻まれた、古い古い剣を。





















「……………お前は本当に………………愚かだな」