重々しい縦長の、巨大な扉は、何者をも迎い入れるかの様に……その口を開けていた。

そこから漂う空気は妙に生温く、甘い香水に似た匂いを従えていた。
白い霧が足元を流れる。


霞んで見える目下には、長い長い緑の絨毯が敷かれており、それを辿った先には…。








―――…主無くとも神々しく輝く、高い玉座。














その背後に見えるのは………真っ赤な、石。
偉大なる狂王の、墓石。















「……………………………………ハハハハハハ………」





これは、歓喜か。


クライブは口元を手で覆い、漏れ出る薄ら笑みを押さえた。


謁見の間へ足を踏み入れた途端、武者震いに似た小さな衝撃が全身に走った。




広過ぎるこの部屋は、自分一人しかいないのに、何だか大勢に囲まれている様な感じがした。

青みがかったオーロラの様な霧が、天井を舞う。

クライブはぼんやりと天井を見上げながら、抜いたままの剣の先をフラフラと振っていた。

長い階段の先にある玉座に視線を移し、ゆっくりと近付いていった。

















玉座の前で、グラリと霧が歪んだ。









自分以外の誰かがいる気がして、クライブは足を止めた。





















「……………………………………………いるのか………?」













思わず口から漏れた自分の言葉に、クライブは首を傾げた。







誰がいるというのか。












私は誰も、待ってやいないし……会いに来た訳でもない。



















「―――クライブ…!」