亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


自分を呼んでくれる彼女の声は。




……か細くて。



……綺麗で。



……可愛らしくて。



……優しくて。



……愛しくて。










愛しくて。

愛しくて。












「……………エル…シ…ア………」














オーウェンは、目を閉じた。




彼女の温もりを感じながら。



笑みを浮かべる。


暖かい日だまりの中にいる様で。













もう、何も。


辛くは、無かった。













「……………もう一回………名前…………呼んで………くれ」







オーウェン、と。






その声で。





呼んでくれ。





ずっと。







ずっと。














『……オーウェン………………』























『…………………ありがとう………』

























―――ありがとう。








ありがとう。






オーウェン。







オーウェン。


























「―――……………………………少し………………休む………」













重なった手。








エルシアの手を握り締め、絡めた大きな手は、ゆっくりと……。






解けていった。






微笑を浮かべて、オーウェンは。























彼女に見守られながら、眠りについた。