亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


エルシアは微笑を浮かべたまま、オーウェンの髪を優しく撫でた。





『―――………しばらく見ない間に………少し……老けちゃったわね……?』

「……………………………バーカ………………俺は……まだ…………26だよ………」

弱々しく笑いながら、オーウェンは無い筈の力で額の細い手を取り、すぐ傍らで座っている彼女の膝に遠慮無く頭を預けた。



血だらけのこの身は…彼女を汚してしまうが………今だけは、大目に見てもらおう。







彼女の膝はとても落ち着くのだ。

どんな高級な、質の良いベッドも、これに勝るものは無い。ある筈が無いのだ。






「…………………はぁ……………」
















握ったエルシアの手を口元に持っていき、紳士らしく、白い手の甲に小さく口付けをした。




エルシアが、もう片方の手で、髪を何度も撫でてくれた。













「………エ…ルシア……………………………………俺は……な」





―――俺は。













俺はな。
























「―――…………………………寂し………かっ…た………」


















常に側にあった冷たい虚無感は………寂しさ。

寂しくて……寂しくて……。






寂しくて………仕方無かった。








お前に会うまで。






でも、お前がいなくなってからは……また……。













………瞼が重くなってきた。
まだ起きていたいのだが………どうやら抗えない様だ。





『―――…オーウェン』






耳元で、エルシアは囁いた。