亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

きっと目は覚めないが、それで良い。






………少し、疲れた。














疲れたんだ。




























乱れきった髪を、何かがフワリと優しく撫でた。





心地良い重みが額に置かれる。




もう何も感じない筈なのに………何故か、暖かい気がした。




眠りを妨げられたオーウェンは、そっと目を開けた。





薄明かりが再び、瞳に反射する。


遠くなってしまった天井の模様は、どんなだったか。

老人よりも弱ってしまったそんな視力で。














曖昧な意識に塗れて。



















………オーウェンは、大きく目を見開き。
















………見下ろしてくる、優しい彼女の笑みを…………見つけた。





















…………。




















「―――……エル……シ…ア………」


















馬鹿みたいに、涙ぐんで、声が震えている自分に気付いた。














………いつ思い出しても綺麗な彼女は、名前を呼ばれて、可愛らしく小首を傾げた。




額に置かれた細くて白い手。

柔らかくて、暖かくて。



もう忘れていた温もり。







こんなにも、心地良いものだったか。



















「……………………………何…だよ……………………迎えに……来て…くれたの………か」




お前は地獄じゃねぇだろ?




…お人好しなところは変わらないんだな。











『………』