亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



ならばこの明かりは、地獄の灯火か。


罪人を慰めてくれる、頼り無いようで………唯一信じれる光か。




(―――……………)






オーウェンは瞬きもせず、ただただ……天井を見詰めた。


………痛みは、無い。


………冷たい風にも、身体は寒さを感じない。


………何も、感じない。













…………何だろうな。
この………虚無感は。


………空しさは。














………子供の頃の………あの感覚。





教育熱心な父と母は、羽ペンとインク壺、羊皮紙、それと日ごとに変わる家庭教師だけを俺によこして、何処かへ行ってしまう。

会うのは食事時のみで、会話は無い。



幼い頃からそんな環境にあったから、何とも思わなかったし、それが普通だった。


しかし、ある時、ふと思うのだ。




…どうして勉強をしているのか。


どうして貴族なのか。


どうして外に出てはいけないのか。


どうして自分はこの広い私室に……いつも……………独りなのか。












虚無。






何かに飢えている自分を、独りの時に見つけた。


いや、いつも独りではないか。



独りだったじゃないか。













そう。






俺は。














………女々しいことを言う様だが…。











…………俺は。
























光に背を向ける様に、ゆっくりと、瞼を閉じた。








俺は……。










(………俺は…………)












このまま眠ってしまおう。