亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~














命を絶つ青白い刃は、この本の僅かな……数センチの距離を。



















―――縮めることは、無かった。

















オーウェンを見下ろす目は大きく見開かれ、小刻みに震えた。














……息の詰まる様な感覚を覚えながら、空いている方の腕を胸の辺りに持って行く。

腕は肩から指先まで震えていた。





















「―――…………っ……………」











黒い手袋を填めた細い指先は………。








………チクリとした痛みと共に、赤が、染みた。















鋭い、刃先だ。




胸の辺りに、ある筈のない刃が生えている。






磨かれた銀の刀身に、見慣れない……自分の鮮血が伝い、足元の白い床に一滴…また一滴……………ゆっくりと落ちていった。


………一瞬、何が起きたのか………理解出来なかった。



…………背中から胸に真直ぐ……貫かれた長い剣。





……何処から…?






何故………こんなものが…。





















背中から胸に刺さった刃先を、震える手で掴み………。


………ベルトークは、背後に振り返った。






























「―――………………………………………………お………前……………………!!」










奥歯を噛み締め、全ての憎悪をぶつける様に、ベルトークは背後の存在を睨み付けた。