命を絶つ青白い刃は、この本の僅かな……数センチの距離を。
―――縮めることは、無かった。
オーウェンを見下ろす目は大きく見開かれ、小刻みに震えた。
……息の詰まる様な感覚を覚えながら、空いている方の腕を胸の辺りに持って行く。
腕は肩から指先まで震えていた。
「―――…………っ……………」
黒い手袋を填めた細い指先は………。
………チクリとした痛みと共に、赤が、染みた。
鋭い、刃先だ。
胸の辺りに、ある筈のない刃が生えている。
磨かれた銀の刀身に、見慣れない……自分の鮮血が伝い、足元の白い床に一滴…また一滴……………ゆっくりと落ちていった。
………一瞬、何が起きたのか………理解出来なかった。
…………背中から胸に真直ぐ……貫かれた長い剣。
……何処から…?
何故………こんなものが…。
背中から胸に刺さった刃先を、震える手で掴み………。
………ベルトークは、背後に振り返った。
「―――………………………………………………お………前……………………!!」
奥歯を噛み締め、全ての憎悪をぶつける様に、ベルトークは背後の存在を睨み付けた。

