足元に、天井に、柱に………。
絶えず、白い背景にいくつもの深い傷と亀裂が走り、細かい破片と埃が舞い散る。
カーブを描きながら乱舞する刃が、容赦無くオーウェンを襲う。
避けようとするが、息が上がった身体はその速さに追いつけないでいた。
流血する傷口や脇腹に、新たな傷が重なる。
「………っ…!……………このっ……!」
思い切って斬撃の嵐に向かって走った。風の端が右目の瞼を掠めた。
ベルトークは腰から短剣を抜き取り、向かって来るオーウェンに向かって投げ付けた。
クルクルと回転する短剣の刃先は、真っ黒な闇を纏っていた。
………それが、足を掠った。
ちょっと掠っただけなのに………その片足だけが突然動かなくなり、ガクンと身体が前に傾いた。
床に両手を突き、動かない足を見やると………足首から、おびただしい量の血が流れていた。傷は斬られたと言うよりまるで抉られた様に、そこにあった一部の皮膚や肉が欠落している。
………足首の後ろ側………アキレス腱が抉られている。
………“闇入り”で消されてしまったのだろう。
足は全く………ピクリとも動かない。
「………………救うだと……?…お前が動くことで…………誰かが救える?…………」
ベルトークの声が頭上から聞こえた。
顔を上げた瞬間、横っ面を蹴られた。
「………っ……!」
両手を張って俯せの体勢から起き上がろうとすると、今度は脇腹を思い切り蹴られた。
「…………救えなどしない…………!………貴様の………思い上がりに過ぎない………!……………少なくとも………私には………」
私には、出来ない。
絶えず、白い背景にいくつもの深い傷と亀裂が走り、細かい破片と埃が舞い散る。
カーブを描きながら乱舞する刃が、容赦無くオーウェンを襲う。
避けようとするが、息が上がった身体はその速さに追いつけないでいた。
流血する傷口や脇腹に、新たな傷が重なる。
「………っ…!……………このっ……!」
思い切って斬撃の嵐に向かって走った。風の端が右目の瞼を掠めた。
ベルトークは腰から短剣を抜き取り、向かって来るオーウェンに向かって投げ付けた。
クルクルと回転する短剣の刃先は、真っ黒な闇を纏っていた。
………それが、足を掠った。
ちょっと掠っただけなのに………その片足だけが突然動かなくなり、ガクンと身体が前に傾いた。
床に両手を突き、動かない足を見やると………足首から、おびただしい量の血が流れていた。傷は斬られたと言うよりまるで抉られた様に、そこにあった一部の皮膚や肉が欠落している。
………足首の後ろ側………アキレス腱が抉られている。
………“闇入り”で消されてしまったのだろう。
足は全く………ピクリとも動かない。
「………………救うだと……?…お前が動くことで…………誰かが救える?…………」
ベルトークの声が頭上から聞こえた。
顔を上げた瞬間、横っ面を蹴られた。
「………っ……!」
両手を張って俯せの体勢から起き上がろうとすると、今度は脇腹を思い切り蹴られた。
「…………救えなどしない…………!………貴様の………思い上がりに過ぎない………!……………少なくとも………私には………」
私には、出来ない。

