亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

「…………呆れているのだ……………理解しがたいな……その貴様の神経は…。………はっきり言って…異常だ」

「………だろ?……………はぁ……………人間ってもんは……厄介だよ…」

「………そんなに生きていたいのか?………復讐のために…」


………オーウェンの虚ろな瞳は、下を向いた。

剣を依然として掴んだまま痙攣し、フラフラと揺れる自分の腕を意味も無く見詰める。






―――…復讐。

















「…………何だろうな……復讐ってのは………………」






そうだ。

これは、復讐。

憎悪に塗れた、長い、長い…復讐劇。




この…目の前の敵を討つ。

敵を殺す。








なのに…。











「…………俺はな………………大事な物を無くしてから…………………自分がのこのこと生き延びていることが……不思議だったんだ。………………俺はあの夜……死んだ筈だったんだ……………………だがこうやって……あんたとまた………向かい合っている…………………………俺は………生きているが………………もう死んでるのさ……。…………分かるかい?………この…………取り巻く世界が、無機質にしか見えない俺の……馬鹿な頭が………」


肩を震わせて、オーウェンはまた笑った。
呼応して、片耳の赤いピアスが揺れた。




「…………復讐………復讐………復讐………復、讐…………言い飽きたし……聞き飽きた。………あんたは……憎い。………そりゃもう………俺の宝物を……壊しやがった…………………あんたは嫌いだ……大嫌いだ」