震える手を足元に伸ばし、床に落ちている刃こぼれの激しい剣を掴んだ。
………親指が折れているのか、酷く握り辛い。
ダラリと前に垂れた後ろ髪を肩で壁に押し付け、切れ味の悪い剣で切った。
ハニーブラウンの長い髪が、血溜まりの上に落ちた。
………随分と、頭が軽くなった気がする。
一気に短くなった髪を、血塗れの手で後ろに掻き分け、壁に寄り掛かったまま苦しそうに呼吸を繰り返す。
「……………はぁ…………はぁ―…………………………はぁ…。………………………ハハハッ……」
顔を上げ、オーウェンは笑みを浮かべた。
向かいに立つ男は、ただ黙ってじっとオーウェンを凝視している。
………ベルトークは刺された左腕を押さえ、視線をオーウェンの足元に移した。
………激しい乱戦で、不覚にも刺されてしまった。
幸い利き手の方ではないし、片手のみで剣を扱うため、支障はさほど無い。
………何ヶ所……自分はこの男を斬った?
………床に流れ出た奴の血の量は半端ではない。
気絶しても……いや、死んでいても不思議ではないのに。
………見るからに弱っている。
呼吸も荒いし、指先が痙攣している。
…………この男は、もう……死ぬ。
死相が見えている。
しかし………この男。
(…………何故………笑ってなどいられるのだ……?)
オーウェンは、笑っている。
こちらを睨む訳でも無く、ただ……笑っている。
「…………どうしたよ…ベルトーク……。……………………同情でも……してくれるのかい?…………有り得ねぇか………ハハッ……」

