亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



もがれた頭と痙攣する胴体は地に伏し、ドロリと真っ黒に変色して溶けた。




………屍の向こうに、ぼんやりと光る鋭い双眸。


牙と爪を返り血で汚し、闇に混じって佇むのは………漆黒の獣、ライマンだった。

………城の扉の前で見た、あのライマンだろう。

ルアは身体を屈め、ライマンに向かって威嚇する。
















………しかし、ライマンはまたもやルアから目を背け、踵を返して廊下の奥へと駆けて行った。



ルアはその後ろ姿を追った。

襲いかかってくる人間の剣を素早い身のこなしで避けながら、速度を上げる。


ちらりと、ついて来るルアを一瞥し、ライマンもそれに伴い、速度を上げた。





二匹は一定の距離を保ったまま、暗く長い廊下を進んだ。

何を考えているのか分からない無口なライマンに、ルアは困惑しっぱなしだった。






































………ああ、やべぇ。














………………左の腕…が………動かねぇ。




………右か?












………どうやって動かすんだっけ?

……………ふっ………………指の動かし方なんて………………真面目に考える事だったか?


















脱力感。











左の肩と、背中、足、脇腹。




その辺の傷口から、こんなにあるのかと思う位の大量の血が……流れていく。



自分が歩いた所が水浸し…………いや……赤いから………これは…血溜まりか。











………三つ編みが解けて…………垂れた髪が前にかかって、非常に邪魔だった。