もがれた頭と痙攣する胴体は地に伏し、ドロリと真っ黒に変色して溶けた。
………屍の向こうに、ぼんやりと光る鋭い双眸。
牙と爪を返り血で汚し、闇に混じって佇むのは………漆黒の獣、ライマンだった。
………城の扉の前で見た、あのライマンだろう。
ルアは身体を屈め、ライマンに向かって威嚇する。
………しかし、ライマンはまたもやルアから目を背け、踵を返して廊下の奥へと駆けて行った。
ルアはその後ろ姿を追った。
襲いかかってくる人間の剣を素早い身のこなしで避けながら、速度を上げる。
ちらりと、ついて来るルアを一瞥し、ライマンもそれに伴い、速度を上げた。
二匹は一定の距離を保ったまま、暗く長い廊下を進んだ。
何を考えているのか分からない無口なライマンに、ルアは困惑しっぱなしだった。
………ああ、やべぇ。
………………左の腕…が………動かねぇ。
………右か?
………どうやって動かすんだっけ?
……………ふっ………………指の動かし方なんて………………真面目に考える事だったか?
脱力感。
左の肩と、背中、足、脇腹。
その辺の傷口から、こんなにあるのかと思う位の大量の血が……流れていく。
自分が歩いた所が水浸し…………いや……赤いから………これは…血溜まりか。
………三つ編みが解けて…………垂れた髪が前にかかって、非常に邪魔だった。

