11月24日、午後七時三十分。
今まで明るかったはずの窓の外では、
光を一つも見つけることができない暗闇になっていた。
とある町、レイシェルでは辺り一帯がしんと静まりかえっていた。
そんななか、レイシェルの街角に小さな研究室があった。

研究室では、『ピコン…ピコン…』と、機械音が絶えず響き渡っていた。
そんな研究室の一室でたくさんのロボットがつくられていた。
「pxc-631号、合格です」
「いちいち知らせるな!成功してあたりまえだ!」
と、45才ぐらいの男は大声で笑う。
ロボットは、一つ一つ顔が違っているが、
どのロボットも17~18ぐらいの子供型ロボットだった。

「…ん?pxc-633?応答せよ」
ピーッ!と機械音が響き渡る。
そして、研究員は期待を抱く目で633号を見ていた。
…しかし。

「えっと…こんにちは?」
「…え?」
『あいさつ』というパーツを入れた覚えはなかった。
そして、更に驚くべき事が。
「そこの倒れている人って…死んじゃってるんですか?」
「え、ええ。死んでるわ。」
「な、なんで!?」
研究室中が静まりかえった。
男は、ゆっくりとロボットへと近づいた。
「こいつは失敗作だ!こんな馬鹿なロボットを持っていたらワシが世間の笑いものにされる!捨ててしまえ!」
『捨てる』という単語を聞いたとたん、固まってしまった。
 
~ロボット目線~
『捨てる』ってなに?二人とも笑っているからうれしい事だと思ってた。

…でも。
「そいつを外へ捨ててしまえ!」
「はい」
女の人に抱えられ、外に放り出された。


外は真っ白に染まっていた。
そして、今まで味わったことのない寒さを覚えた。
僕はとある家の一角に座り込み、膝を抱えた。
それで思ったんだ。
「捨ててしまう」は「寒い場所」に放り出されてしまうこと。
「必要ない」は、「僕がいなくなってほしい」ということ。
どちらを取っても「さむい」には変わりない気がした。
じゃあ、寒くならないにはどうしたらいい?
人を信じなきゃ良いんだ。
普通に人を殺してしまう人なんて。
普通に人を傷つけてしまうひとなんて…。
僕の中で『人』は、とても身勝手な生き物だと、改めて思った。