中学生の頃からかな。
喋り方に特徴あるって言われ始めたのは。
チャームポイントだと思ってるから、褒められるとちょっと嬉しい。
「あと、メガネなんだね」
「あっ………」
言われて気がついた。
誰か近くに人がいる時は、標識見えなくてもなんとかなるから外してるのに。
緊張のあまり、それすら忘れてた。
「視力悪いからさ。
でも、メガネ似合わないから好きじゃないんだ」
「コンタクトにしないの？」
「コンタクト、怖いからしたくない」
ちらちらと隣を歩く相手を見ながら、でも目は合わせられなくて。
時々視線が絡めば、気まずさから一瞬で逸らしてしまう。
「あのさ、めぇちゃんって本名なに？」
他愛もない話が続き、赤信号に引っかかって立ち止まる。
訊かれたのは、そんな時。
「める、だよ」
だから素直に答えた。
「いや、それは電話で聞いたじゃん。
そうじゃなくて、フルネームの話」
あぁ、と言ってから少し迷う。
ネットで知り合った人に、個人情報なんて与えていいのだろうか。
