「ね、行こ」
「いや、あの」
手を掴まれて、連れていかれそうになった瞬間。
「このコ、これから私と遊ぶから」
人混みの中から、1人現れた女の子。
あたしの肩に腕を回してくる。
「遊び相手なら、他当たってくんない?」
そう言って、見知らぬ男性からあたしを引き剥がす。
舌打ちをして、男性はその場から去ってしまった。
状況を読み込めないまま、離れて向かい側に立った女の子を見つめる。
ボブヘアは明るい茶色で、桃色の瞳。
カラコンを入れているのかもしれない。
露出度の高い服を着て、すらっと長い脚をアピールしているようだった。
「この辺、ガラ悪いの多いから気を付けなよ」
ハスキーボイスが、カッコよさを倍増させる。
「あ.あのっ」
そのまま人混みに紛れてしまいそうな彼女を、無意識に呼び止めてしまった。
「あ、えっと、あの……ありがとうございます」
躊躇って言ったせいで、語尾のほうは小さな声に。
「なに?」
聞こえなかったのか、彼女がまた近づいてきた。


