辺りをキョロキョロ見回して、目印になりそうなものを探していく。
進む道を覚えておいて、帰りは来た道を戻ればいい。
右左折さえ間違えなければ、ちゃんと帰って来られるはず…だから。
響の家から大通りに入って、駅へ向かうと急激に人が増えた。
駅ビルがあるから、みんなウィンドウショッピングしているのかもしれない。
周りの人たちから、いったい自分はどんな風に見られているのだろう。
風景と化して、むしろ見えていないんじゃないかな。
それとも、田舎から来たただの女子高生だけど、ちょっとは都会人っぽく見えるかな?
「ねぇ、キミ」
そびえ立つ高いビルに気を取られていると、背後から肩を叩かれた。
驚いてビクッと跳ねてから、振り返る。
「今、暇?」
明るい色の髪の毛に、ジャラジャラとついたアクセサリー。
どっかの不良男子?
「え、あの」
どう答えたらいいかわからなくて、目を泳がせてしまう。
「暇だったらさ、俺らと遊ぼーよ。
あっちにダチいるから」
笑顔で言われても対応に困る。
目を合わせるのが怖くて、俯いた。