響はたぶん、昼間はずっと寝てるのだろう。
起こしちゃうと悪いし、せっかくだから外出しよう。
ついでに、朝食でも食べよう。
そうだ、響に料理でも振る舞ってあげたらいいんじゃないかな。
料理が苦手なあたしでも、チャーハンやパスタくらい作れるんだから。
財布の残金は極わずかだけど、これでも何かは買えるだろう。
玄関を静かに閉めて、鍵もかけたのを確認。
外の空気に馴染めるように、何度か深呼吸をした。
青々とした空。
つい先程は、この空をこことは遠く離れた別の場所から見ていたんだよね。
たとえ離れていても、今自分が立つ地球の裏側にいても、空は変わらない。
朝だったり夜だったり、晴れだったり雨だったり……
違いはあるけれど、同じものを同じ時間に見ることができる。
ひょっとしたら、あたしと同じように知り合いの1人くらい空を見上げているかもしれない。
エレベーターを使う気になれず、階段をゆっくり下りていく。
建物から道路に出ると、生温い風が解かれた髪を揺らした。
方向音痴な上に、知らない場所。
迷子にだけは、ならないように注意しなくちゃ。