目を丸くして驚いていると、響はうん、と頷く。
「親も入れたことねぇもん」
「そうなんだ」
本当か嘘か、よくわかんない。
まだ、響の言葉を全部信用する気にはなれてないのかもしれない。
でも、もし本当だったら嬉しいって思うよ。
あたしが初めての来客なんて、特別な気がしちゃうもん。
ひょっとしたら、一番最初って立ち位置を、すごく人は喜ぶ生き物なのかもしれないね。
夜ご飯を済ませた後、ベッドに寄りかかりながらウトウトしてしまう。
家を出てきたのが夜中だったし、ずっと移動してたし、新しい環境だし。
まぁ、移動中に仮眠は取ったものの。
心境的には大丈夫でも、体のほうは疲れが出てきたみたいだ。
お風呂を沸かして、先に入りなと譲ってくれる響に甘えて急いで入浴を済ませた。
「お風呂出たよ」
タオルで濡れた髪の毛を拭きながら、テレビを見ていた彼の隣に座る。
「じゃ、俺も入ってくるから。
眠かったら先寝てて。
ベッド使っていいよ」
あと好きにチャンネル回して、とテレビのリモコンを渡されて立ち上がった響を見上げる。
「ありがと」
小さく、お礼を呟いた。


