夜、昼間よりだいぶ涼しくなった。
テレビをつけて適当にチャンネルを回す。
特に見たい番組もなく、静寂を誤魔化すようにニュースが流れているだけ。
車の通りが少ないらしく、外からは虫の鳴き声が木霊するくらいだ。
夏休みのこの時期は、蝉がやたら鳴いている。
あたしの地元では、もっと沢山の声が響いていたっけ。
なぜ鳴くのか理由は知らないけど、それはまるで自分の存在意義を主張しているみたい。
よく、蝉の命は短くて2週間くらいすると死んじゃうって聞いたことがある。
でも実際は、飼育が難しいからすぐ死んじゃうだけで、野外で生きる蝉の中には長生きするのもいるんだって。
慣れない場所では長く生きられないってことを、表してるんだと思う。
それに、幼虫として地中にいる期間を加えたら、虫の中でも長寿らしいし。
ただ、多くの虫は役目を果たしたら命を落とす。
言い換えれば、子孫を残したら、数日の間に呆気なく呼吸を止める。
とっても、素晴らしく、悲しいほどに機能的。
だとしたら………。
子孫を残して育てて、子どもを自立させた上で尚…生き続ける人間には、いったいどんな役目があるんだろう。


