中身を順番に出していくのを、しばらく彼は黙って見ていた。
何が入っているのかが気になるのか、興味津々そうに。
「あ、洋服しまうのはこの部屋出て玄関までの間にある収納スペース使って」
「うん、わかった」
ビニール袋に詰め込んできた洋服数着。
中身が見えない袋には、下着が入ってる。
それらを、忘れないうちに小走りで玄関近くまで行って片付けてしまう。
いわゆるリビングらしい部屋に戻って再びキャリーバッグの中に手を伸ばした時、横で何かが剥がれる音がした。
「麺伸びちゃうから、食っちゃおう」
はい、と割り箸を差し出され作業は一時中断。
部屋のどこに何があるだとか、片付ける場所とか、いろいろと説明を受けながら食事を済ませた。
両手を合わせて、ごちそうさま。
食べた後片付けを済ませると、荷物整理を再開。
「めぇちゃん、これなに」
「筆記用具とスケッチブック」
「へぇー、中見ていい?」
「わっ、ちょっと、ダメだよ」
キャリーバッグから引っ張り出したスケッチブックを、響が開こうとする。
それを必死で食い止めた。


